「前は、ふつうに働けていたのに」
「朝になると、体が動かない。気づけば、何か月も家にいる」
「戻りたい。でも、また同じことになったらと思うと、こわい」
この記事は、そんな気持ちを抱えている方に向けて書きました。
急がせるつもりは、ありません。いますぐ何かを決めなくても、大丈夫です。読むだけでも、かまいません。「こういう場所も、あるんだな」と、頭のすみに置いてもらえたら、うれしいです。
この記事でわかること
- いきなり会社に戻らなくてもいい、ということ
- 就労B型が、「練習の場所」として使えること
- 実際に通うと、どんな一日になるか
- 使いはじめるための手続き(受診・区役所・手帳との関係)
- 最初の一歩は、とても小さくていいこと
- 利用料や、会社に知られるかなど、気になること
1. 「前は働けていたのに」と、自分を責めていませんか
病気やけが、心の不調、職場での出来事、家族のこと。働けなくなる理由は、人によってさまざまです。
でも、どんな理由でも、仕事から離れたあとで「こわい」と感じるのは、自然なことです。あなたが弱いからでも、気持ちが足りないからでもありません。
前に働けていた人ほど、「前の自分」とくらべて、苦しくなることがあります。いまは、くらべなくて大丈夫です。「戻りたい」という気持ちが、少しでもあること。それだけで、もう十分です。
2. いきなり会社に戻らなくていい。間に「練習の場所」がある
仕事に戻ることを考えると、「面接」「職場の人間関係」「毎日フルタイム」と、高い壁ばかりが浮かぶかもしれません。
でも、家と会社のあいだには、「練習の場所」があります。そのひとつが、就労B型(就労継続支援B型)です。
就労B型は、障がいや病気のある方が、雇用契約を結ばずに、自分のペースで作業をしながら通える、国の制度の場所です。国の制度では、「働くために必要な知識や力を高める訓練」をする場、とされています。
- 雇用契約がないので、会社のような「結果を出さなければ」という厳しさはありません
- 週に何日、何時間通うかは、相談して決められます
- 調子の悪い日は、休めます
- 作業をすると、工賃(作業の対価)が受け取れます
3. 「障がい」という言葉に、ひっかかる方へ
「障がいのある方のサービス」と聞いて、「自分は、そういうのとはちがう」と感じた方も、いるかもしれません。
就労B型でいう「障がいや病気」には、うつ病や、適応障害、不安障害など、心の不調も含まれます。もともと会社で働いていて、心の不調をきっかけに、通いはじめる方もいます。
制度を使うことは、あなたが「障がい者」になる、ということではありません。いまの自分に合う支えを、借りる、ということです。障害者手帳がなくても、使える場合もあります(くわしくは、5章で)。
4. 実際に通うと、どんな一日?
たとえば、札幌市豊平区の、ハコブネ平岸(就労継続支援B型)では、次のような一日です。「午前だけ」「午後だけ」「1日」の、3つの通い方から選べます。
| 時間 | すること |
|---|---|
| 10:00 | 事業所に着く。その日の体調を、スタッフに伝える |
| 10:15 | 作業をする |
| 11:00 | 休憩(15分) |
| 12:00 | 午前だけの方は、片付けて帰る。1日の方は、昼食と休憩(昼食の用意も、お弁当の持参もできます) |
| 13:00 | 午後の作業。午後だけの方は、ここから(体調を伝えてから始める) |
| 14:00 | 休憩(15分) |
| 15:00 | 片付けて、帰る |
通う日数や時間は、体調や生活リズムに合わせて、相談して決められます。週に1〜2日、午前だけ、といった短い時間から始めることもできます。ほかの事業所でも、短い時間から始められるところが、多くあります。
通う日が決まると、朝起きる時間、家を出る時間、帰ってくる時間ができて、1週間に、少しずつリズムが生まれます。「今日は、行けた」。その一日が、次の一日の支えになります。
5. 手続きは、前に進むための一歩
就労B型は、障がいや病気のある方のためのサービスなので、使いはじめるには、医師の診断と、区役所での手続きが必要です。
「手続き」と聞くと、少し身構えてしまうかもしれません。でも、ひとつずつ見ると、どれも、誰かに話を聞いてもらい、一緒に考えてもらうための手順です。一人で家で考えていたときより、相談できる人が、少しずつ増えていきます。
| 手順 | すること |
|---|---|
| 1. 受診して、相談する | 心療内科や精神科、かかりつけの病院で、いまの状態や、働けなくなったきっかけを話します。すでに通院している方は、主治医に「就労B型を考えている」と伝えます |
| 2. 区役所に相談する | お住まいの区の区役所(保健福祉課)で、就労B型を使いたいと相談します。必要な書類や、進め方を教えてもらえます |
| 3. 見学・体験をする | 気になる事業所を見学します。手続きの前でも、見学や相談はできます |
| 4. 自分に合う働き方を確かめる | はじめて就労B型を使う方は、「就労選択支援」(自分に合う働き方を、一緒に確かめるサービス)を、先に使う場合があります(2025年10月から)。区役所や事業所が案内してくれます |
| 5. 受給者証を受け取る | 区役所から、「障害福祉サービス受給者証」が届きます |
| 6. 通いはじめる | 事業所と契約して、少しの日数から、通いはじめます |
順番は、前後することがあります。1と2の、どちらから始めても大丈夫です。
障害者手帳は、なくても使える場合があります
障害者手帳をもっていなくても、医師の診断書などで、就労B型を使える場合があります。サービスを使うためだけに、手帳をつくる必要は、ふつうありません。手帳をつくるかどうかは、主治医や、区役所の保健福祉課と相談して決めてください。
受診すること、区役所に行くこと。それは、「自分は病気だ」と決めつけることではありません。こわさの正体を、知っている人と一緒に確かめて、次の一歩を選べるようにするための、手順です。
6. 「少しの間だけ」でも、大丈夫
就労B型には、就労移行支援のような「原則2年まで」といった、利用期間の決まりがありません(厚生労働省の資料)。
「まず少しの間だけ、通ってみる」ことも、「ゆっくり長く通う」ことも、どちらも選べます。はじめから、「ここで何年続ける」と決める必要はありません。合わなければ、やめることも、別の場所に移ることもできます。
次の道(一般の仕事、A型など)は、通ってみて、気持ちや体調が落ち着いてから、あとで考えて大丈夫です。
7. 最初の一歩は、とても小さくていい
「社会復帰」と聞くと、大きな決心が必要な気がします。でも、最初の一歩は、とても小さくていいのです。
- この記事を、最後まで読んでみる
- 気になる事業所のホームページを、のぞいてみる
- 電話がしんどければ、LINEやお問い合わせフォームで、ひとこと送ってみる
- ご家族に、代わりに問い合わせてもらう
- 見学に行って、見るだけで帰ってくる
どれも、立派な一歩です。今日できなくても、明日でも、来月でも、かまいません。
8. よくある質問
Q. 長く仕事を離れていても、大丈夫ですか?
大丈夫です。長く仕事から離れていた方も、通っています。まずは、見学や、話を聞くだけから、始められます。
Q. 利用料は、かかりますか?
前年の所得に応じて、月ごとの自己負担の上限が決まります。生活保護を受けている方や、住民税が非課税の世帯の方は、0円です。18歳以上の方は、ご本人と配偶者の所得で判断され、親やきょうだいの収入は、ふくまれません。昼食代などの実費が、別にかかることがあります。
Q. 診断がなくても、就労B型は使えますか?
就労B型は、障がいや病気のある方のサービスなので、医師の診断が必要です。心の不調が気になるときは、まず、受診や、区役所(保健福祉課)への相談から、始めてみてください(5章)。
Q. 手帳をつくると、就職のときに、会社に知られますか?
手帳を持っていることを、会社に伝える決まりはありません。一般の求人に応募するときは、言わなくても大丈夫です。反対に、通院や体調への配慮を受けやすい「障害者雇用」の求人に応募するときは、手帳を見せて応募します。どちらの働き方にするかは、ご本人が選べます。
なお、年末調整で「障害者控除」を受けると、会社の担当者に伝わります。知られたくないときは、年末調整では書かずに、自分で確定申告をして、控除を受ける方法もあります。
Q. やっぱり合わなかったら、やめてもいいですか?
やめることも、別の事業所に移ることもできます。そのためにも、いくつか見学や体験をしてから、決めると安心です。
Q. 家族に、どう話せばいいか分かりません。
「少し、練習できる場所を見つけた」と、この記事を見せるだけでも、大丈夫です。ご家族向けに書いた記事もあります。「ご家族のための就労B型ガイド」も、あわせてご覧ください。
就労B型のしくみや、利用までの流れは、「就労B型(就労継続支援B型・作業所)とは?」で、くわしくまとめています。
こわいままで、少しだけ試してみる
- 「前は働けていたのに」と、自分を責めなくていい
- 家と会社のあいだに、「練習の場所」がある
- 就労B型は、心の不調で働けなくなった方も、使える
- 週1〜2日、午前だけ、から始められる
- 手続きは、前に進むための一歩。まずは、受診や、区役所への相談から
- 「少しの間だけ」でも、合わなければやめても、大丈夫
- 最初の一歩は、とても小さくていい
こわさが、すっかり消えてから動く必要はありません。こわいままで、少しだけ、試してみる。それで、十分です。
ハコブネにも相談できます
札幌市豊平区の平岸にある、ハコブネ平岸(就労継続支援B型)でも、見学や体験のご相談を受け付けています。「まずは話を聞いてみたい」というご相談だけでも大丈夫です。電話がしんどい方は、公式LINEや、お問い合わせフォームからどうぞ。相談支援専門員がまだいない方も、そのままご連絡ください。
※この記事は、2026年10月時点の、厚生労働省や札幌市の公式ページの情報をもとにした、一般的な説明です。制度の内容は変わることがあります。対象になるか、手帳が必要かなどは、一人ひとりちがうため、くわしくは、お住まいの区の区役所(保健福祉課)でご確認ください。
