「家にいる時間が長くて、このままでいいのかな」
「何て声をかければいいのか、分からない」
「自分たち(親)が先にいなくなったら、この子はどうなるんだろう」
ご家族のことで、そんなふうに悩んでいる方は、少なくありません。この記事では、ご家族が最初に相談できる場所と、「就労継続支援B型(就労B型)」という選択肢があることを、やさしくまとめました。ひとりで抱えこまなくて大丈夫です。
この記事でわかること
- 「ひきこもり」とは何か。背景を確かめる、ということ
- 就労B型とは、どんな場所か
- 声のかけ方のヒント
- ご家族ができること
- 費用について(同居のご家族の収入は関係する?)
- 札幌で相談できる窓口
- 手続きの流れ
- よくある質問(手帳、大人になってからの発達障害、ブランクなど)
1. まず、ご家族の気持ちから
心配になるのも、焦ってしまうのも、ご本人を大切に思っているからです。「早く動いてほしい」と思う日もあれば、「そっとしておいたほうがいいのかも」と迷う日もあるでしょう。どちらも、自然な気持ちです。
そして、いちばんつらい思いをしているのは、ご本人かもしれません。学校や職場、社会のなかで、「自分の居場所がない」「居場所を見つけられなかった」と感じて、家で過ごす時間が長くなっている方もいます。なまけているわけでも、わがままでもなく、安心して過ごせる場所に、まだ出会えていないだけ、ということもあります。
病気やけが、心の不調、職場での出来事などがきっかけで、働けなくなってしまった方もいます。働けない期間(ブランク)が長くなると、「社会復帰したいけれど、こわい」と感じて、動けなくなることがあります。その気持ちも、自然なことです。
ご家族が、ご自分の気持ちを話せる場所を持つことも、大切です。ご本人のために動く前に、まず、ご家族が相談できる窓口があることを知っておいてください(7章で紹介します)。
2. 「ひきこもり」は病名ではなく、「家にいる状態」のこと
「ひきこもり」は、病気の名前ではありません。「家で過ごす状態が、続いていること」を指す言葉です(厚生労働省のガイドライン)。その背景には、さまざまな理由があります。
たとえば、うつなどの心の不調や、発達障害が、背景にある場合があります。発達障害は、大人になってから気づく方もいます。子どものころは、まわりに助けられて、目立たなかった。社会に出て、仕事や人間関係でつまずいてから、気づいた、という場合です。
ご家族の前では普通に見えても、外では、緊張が強く、強い疲れを感じている方もいます。場面によって、様子が変わることがある、と説明されています(国立障害者リハビリテーションセンター)。「どうして外ではできないの」と責める前に、ご本人の話を、聞いてみてください。
背景に、病気や障がいがあるかどうかは、ご家族が決めることではありません。専門の窓口や、医師に相談して、一緒に確かめていきます。そのうえで、就労B型などの障害福祉サービスが、選択肢になる場合があります。
3. 就労B型は、どんな場所?(ご家族向けに、ひとこと)
就労B型は、障がいや病気のある方が、雇用契約を結ばずに、自分のペースで作業をしながら通える、国の制度の場所です。体調に合わせて、通う日数や時間を決められます。
国の制度では、就労に必要な知識や力を高めるための「訓練」をする場、とされています。いきなり働く、のではなく、通う、慣れる、作業を試す、という段階から始められます。作業をした分に応じて、「工賃」を受け取れます。
使えるかどうかは、医師の診断書などで確認されます。障害者手帳は、なくても、使える場合があります。まずは、区役所(保健福祉課)や、主治医に、相談してみてください。
くわしくは、「就労B型(就労継続支援B型・作業所)とは?対象・A型との違い・利用料・流れ」をご覧ください。
4. 声のかけ方のヒント
いちばん大切なのは、責めないで、ご本人の味方でいることです。「どうして動かないの」「いつまでこのままなの」という言葉は、ご家族の心配から出たものでも、ご本人には、責められているように聞こえることがあります。「あなたのことを、応援しているよ」「ここにいていいんだよ」という気持ちが伝わると、ご本人も、次の一歩を考えやすくなります。
ご本人にとって、「働く」という言葉が、重く感じられることもあります。次のような声のかけ方を、参考にしてください。
- 責めずに、「応援しているよ」という気持ちを、まず言葉にする
- 「働いてほしい」ではなく、「こういう場所があるみたい。見てみる?」と、情報として伝える
- 返事を急がない。その日に答えが出なくても、大丈夫です
- 「行きたくない」と言われたときは、理由を責めずに、「そうなんだね」と受けとめる
- 「見るだけ」「話を聞くだけ」でもいい、と伝える。見学したら決めなくてはいけない、ということはありません
- パンフレットや、事業所のホームページを、ご本人の目につくところに置いておく
声をかけるタイミングは、ご本人の調子が落ち着いているときが、ひとつの目安です。うまくいかない日があっても、ご家族のせいではありません。
5. ご家族ができること
- 情報を集める:事業所のホームページを見る、電話で聞いてみる
- 窓口に相談する:区役所の保健福祉課や、相談できる窓口に、まず話してみる
- 見学に、一緒に行く:ひとりで行くのが不安な方もいます。事業所によって、ご家族との見学が可能です
- ご本人の「やってみたい」を、いちばん大切にする
- 手続きを手伝う:申請書の提出は、郵送でもできます(札幌市)。ご家族が手伝う場合は、区役所に、どう進めるかを確認してみてください
ご家族だけで、事業所に相談することもできます。ご本人は来られなくても、ご家族の相談を受け付けている事業所は多いです。
はじめての相談では、「何を、どこから話せばいいか分からない」と、不安な表情で来られるご家族もいます。順番やまとまりは、気にしなくて大丈夫です。話しやすいところから、ゆっくり話してください。話を聞いてもらえると分かるだけで、ほっとされる方もいます。
ご本人に「やってみたいこと」がある場合は、一緒に考えることもできます。まだ決まっていない場合も、心配いりません。一緒に考えながら、見つけていくこともできます。
6. 費用について、ご家族が気になること
障害福祉サービスの利用料は、18歳以上の方の場合、ご本人と、その配偶者の所得で決まります。同居している親やきょうだいの収入は、決める対象に入りません。
月ごとの自己負担には、上限があります。市町村民税が非課税の世帯や、生活保護を受けている世帯は、自己負担が0円になります。昼食代などの実費は、別にかかることがあります。
工賃は、通っているご本人が受け取ります。生活保護や障害年金を受けている方は、工賃のあつかいも気になると思います。「B型作業所の工賃と生活保護」「障害年金を受けながらB型作業所に通う」もあわせてご覧ください。
7. 息子さん・娘さんが家にいるとき、札幌で相談できる窓口
| 窓口 | こんなときに |
|---|---|
| お住まいの区の区役所(保健福祉課) | B型の申請や、障害福祉サービスの相談。まずは、ここから |
| 札幌市ひきこもり地域支援センター 電話 011-863-8733(相談専用) |
家で過ごす時間が長く、外に出るのがむずかしい方の、ご本人やご家族の相談。電話は平日の9時30分〜12時、13時〜16時。来所は電話で予約。必要に応じて、家庭訪問での支援にも対応 |
| 札幌市自閉症・発達障害支援センター「おがる」 電話 011-790-1616 |
発達障害かもしれない、と感じたときの、ご本人やご家族の相談。大人の方の相談も受けています |
| 札幌こころのセンター(札幌市精神保健福祉センター) | 心の健康についての相談。精神障がいのある方や、そのご家族も相談できます |
相談窓口の受付時間や電話番号は、変わることがあります。かける前に、札幌市や各センターの公式ページで、確認してください。
8. 手続きの流れ
- まず、相談する:区役所や、7章の窓口に相談します。必要なときは、精神科・心療内科を受診して、主治医に相談します
- 気になる事業所に問い合わせる、または見学を申し込む
- 区役所の保健福祉課で、申請する(郵送でもできます)
- サービス等利用計画案(どんなサービスをどう使うかを書いた計画)を出す。相談支援事業所につくってもらえるほか、ご自分でつくる「セルフプラン」もあります
- 区役所の職員(調査員)が、ご本人のところに来て、心身の状況などを聞き取る
- 支給が決まり、「受給者証」が届く
- 事業所と相談して、通う日数や時間を決め、通いはじめる
相談支援専門員とは、サービスの計画づくりを手伝ってくれる人です。いなくても、ご本人やご家族でつくる「セルフプラン」で進められます。相談支援事業所は、区役所で案内してもらえます。
サービスによっては、支給が決まるまでに2か月ほどかかる場合があります。手続きを始めるときは、早めに区役所へ相談してください。
9. よくある質問
Q. 本人が、行きたがりません。
無理に連れて行かなくて大丈夫です。まずは、ご家族だけで見学や相談をして、ご本人に、様子を話してみる方法もあります。ご本人の「見てみようかな」を、待つ時間も大切です。
Q. 息子(娘)が働かず、家にいます。どこに相談すればいいですか?
まずは、お住まいの区の区役所(保健福祉課)や、7章の窓口に、ご家族だけで相談できます。ご本人が一緒でなくても大丈夫です。就労B型は、ご相談のなかで出てくる、選択肢のひとつです。
Q. 50代の子どもが、長く家にいます。相談できますか?
年齢を理由に、あきらめなくて大丈夫です。区役所や、札幌市ひきこもり地域支援センターは、ご本人やご家族の相談に応じています。年齢についての決まりがあるかどうかは、窓口に、おたずねください。
Q. ひきこもりでも、障害者手帳はもらえますか?
「ひきこもり」は病名ではないので、それだけでは、手帳の対象になりません。背景に、診断された病気や障がいがあり、日常生活や社会生活に制限があって、基準に当てはまる場合に、対象になることがあります。診断書は、初診日から6か月たったあとのものが必要です(札幌市)。まずは、主治医や、区役所に、相談してみてください。手帳がなくても、就労B型を使える場合があります。
Q. 大人になってから、発達障害が分かることはありますか?
あります。子どものころは目立たず、社会に出て、仕事や人間関係でつまずいてから、気づく方もいます。気になるときは、「おがる」(011-790-1616)や、区役所、主治医に、ご本人やご家族が相談できます。
Q. 長く働けていません(ブランクがあります)。社会復帰できますか?
急いで決めなくて大丈夫です。就労B型には、ブランクのある方も通っていて、「少しの間だけ試す」という使い方もできます。くわしくは、「社会復帰がこわいとき|就労B型で、少しの間だけ訓練に通ってみる」をご覧ください。
Q. 診断がなくても、就労B型は使えますか?
就労B型は、障がいや病気のある方のサービスなので、医師の診断書などで、確認されます。障害者手帳は、なくても、使える場合があります。まずは、区役所(保健福祉課)や、主治医に、相談してみてください。
Q. 家族だけで、事業所に相談してもいいですか?
ご家族からの相談を受け付けている事業所は多くあります。まずは、電話や問い合わせフォームで、聞いてみてください。
Q. 親が高齢で、先のことが心配です。
将来のことは、ひとりで考えこまず、区役所の保健福祉課や、相談支援事業所に、早めに相談してみてください。通う場所がひとつあることが、将来の暮らしを考えるきっかけになる場合もあります。
ひとりで抱えこまなくて大丈夫
- 「ひきこもり」は病名ではなく、家にいる状態。背景を、相談して、一緒に確かめていく
- 就労B型は、自分のペースで通える、雇用契約のない場所
- 「働いて」ではなく、「見てみる?」という声かけがおすすめ
- 見学は、ご家族と一緒でも、ご家族だけでも、できる
- 利用料は、本人と配偶者の所得で決まり、同居の親やきょうだいの収入は対象外
- 相談できる窓口は、区役所のほかにもある
ハコブネにも相談できます
札幌市豊平区の平岸にある、ハコブネ平岸(就労継続支援B型)でも、ご本人だけでなく、ご家族や支援者の方からのご相談も、お気軽にどうぞ。見学や体験のご相談も受け付けています。相談支援専門員がまだいない方も、そのままご連絡ください。
※この記事は、2026年10月時点の、厚生労働省、札幌市などの公式ページの情報をもとにした、一般的な説明です。制度や相談窓口の内容は変わることがあります。一人ひとりの状況によって手続きが異なるため、くわしくは、お住まいの区の区役所(保健福祉課)でご確認ください。
