夜、布団に入ると、考えごとが止まらなくなる。
「あのとき、ああしていれば」と、同じことを何度も思い出す。
先のことを考えると、胸のあたりが重くなる。
まわりはうまくいっているように見えて、自分だけが取り残されている気がする。
人は誰でも、悩みます。不安になります。気持ちが下を向く日もあります。それは、あなたが弱いからではありません。真剣に生きている人ほど、よく悩むものです。
昔から「病は気から」と言われます。心と体は、つながっています。悩みや不安を長く抱えたままでいると、心だけでなく、眠りや食欲、体の調子にまで重さが出てくることがあります。反対に、心が軽くなると、体もふっとゆるむ。そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。だからこそ、心が重くなりすぎる前に、少し軽くしておくことが、体をいたわることにもつながります。
このコラムでは、昔から受け継がれ、私が師から学んできた知恵をもとに、心を軽くする4つの見方と、悩みが止まらないときの、たったひとつの解決策をお伝えします。
この記事でわかること
- 心を軽くする4つの見方
- 悩んでも答えが出てこない理由
- 悩んだときの、たったひとつの解決策
- 今日からできる、小さな3つのこと
1. どんなものにも「季節」がある
自然には、春・夏・秋・冬のめぐりがあります。冬の木は、葉を落として、何もしていないように見えます。でも土の中では、根が静かに伸びて、春に芽を出す力をたくわえています。
人の人生にも、同じように季節があると考えてみてください。
何をやってもうまくいかない。気力がわかない。人に会いたくない。そんな時期は、人生の「冬」なのかもしれません。冬に、夏と同じように動こうとすると、苦しくなります。冬には、冬の過ごし方があります。
そして、冬は必ず終わります。「夜明け前がいちばん暗い」と言われるように、いちばんつらいときは、次の季節がすぐそこまで来ているときでもあります。物事は、いつまでも同じところにとどまりません。いい時も、つらい時も、めぐっていきます。
いまの自分は、どの季節にいるだろう。そう問いかけるだけで、「ダメな自分」ではなく、「冬の途中にいる自分」として、自分を見ることができます。
2. 未来は、まだ決まっていない
不安の正体は、多くの場合「まだ起きていない未来」です。「きっとうまくいかない」「このまま悪くなる」。頭の中で、何度も同じ未来を思い描いてしまいます。
でも、未来はまだ決まっていません。いい方向にも、そうでない方向にも、いくつもの道が重なったまま、あなたの前に広がっています。
そして人は、目を向けたものを見つけるようにできています。「うまくいかない理由」を探し始めると、理由はいくらでも見つかります。反対に、「今日できたこと」を探せば、小さくても、きっと見つかります。
不安を無理に消そうとしなくて大丈夫です。ただ、「悪い未来」ばかりに目を向けていることに気づいたら、「ほかの道もあるかもしれない」と、可能性をひとつ残しておいてください。見る方向が変わると、見える道も変わってきます。
3. 全部と戦わなくていい
悩みが重なっているとき、人は全部を一度に片づけようとします。仕事のこと、お金のこと、家族のこと、体のこと。全部に全力でぶつかれば、力はすぐに尽きてしまいます。
昔の戦上手な人たちは、すべての戦いに勝とうとはしませんでした。勝てる場所を選び、時を選び、ときには引くことも作戦のひとつと考えました。引くことは、負けではありません。力を立て直して、次に進むための一手です。
悩みも同じです。気になっていることを、次の3つに分けてみてください。
- いま向き合うこと
- 少し先でいいこと
- 自分ではどうにもできないこと
自分ではどうにもできないことに力を使うのを、いったんやめる。それだけで、使える力が戻ってきます。そして、自分では答えが出ないことは、このあとお話しするように、知っている人に聞けばいいのです。
4. 人生の舵は、自分が握っていい
昔から、人の上に立つ人がまず学んだのは「自分を整えること」だったと言われます。国を治める前に、まず自分の心を治める。自分が整っていれば、ものごとを正しく見て、正しく決めることができるからです。
あなたの人生という船の舵を握っているのは、あなた自身です。まわりの声や、世の中の「こうあるべき」に流されそうになったら、「自分はどうしたいのか」に立ち返ってみてください。
もうひとつ、大切なことがあります。すぐれた王や武将ほど、一人では決めませんでした。そばに信頼できる軍師を置き、話を聞き、知恵を借りました。なぜ、そうしたのか。その理由が、次の話です。
5. ひとりで悩んでも、答えは出てこない
悩んでいるとき、人は頭の中で答えを探します。これまでの経験や、知っていることの中から、なんとか答えを見つけようとします。
でも、自分の経験や知識を超えた答えは、どれだけ考えても出てきません。頭の中にないものは、探しても見つからないからです。だから同じところをぐるぐる回って、夜が明けてしまう。それが「悩みが止まらない」ことの正体です。
ひとりで悩み続ける時間は、残念ながら、答えにはつながりません。
ここで大切なのは、悩んでしまう自分を責めないことです。あなたが悪いのではありません。悩んだときの解決のしかたを、まだ知らなかった。ただ、それだけです。
6. 解決策は、たったひとつ。「知っている人に聞く」
私が師から教わった、悩んだときの解決策は、たったひとつです。答えを知っている人に、聞くこと。これだけです。
自分の中にない答えは、自分の外にあります。同じことを経験した人、その分野にくわしい人に聞けば、何日も悩んでいたことが、数分で片づくことも珍しくありません。人に聞くことは、弱さではありません。舵をしっかり握るための、いちばん賢いやり方です。
周りにいないなら、探し出す
「でも、聞ける人が周りにいない」。そう思う方もいるかもしれません。そのときは、知っている人を探し出してください。
- 同じ経験をしてきた人
- その分野の専門家や、相談の窓口
- 病気や体のことなら、かかりつけの医師や病院の相談室
最初に聞いた人が答えを知らなくても、「それなら、あの人が知っている」と、次の人につないでもらえることがあります。一人に聞くことが、答えまでの道をひらきます。
悩む時間を、「誰に聞けばいいか」を考える時間に変えてみてください。それだけで、止まっていた足が、前に動きはじめます。
今日からできる、小さな3つのこと
- いまの自分の「季節」を、ひとことで言ってみる(「いまは冬の途中」など)
- 気になっていることを紙に書き出して、「いま向き合うこと」「少し先でいいこと」「自分ではどうにもできないこと」に分ける
- 書き出したことの中で、自分では答えが出ないものを、知っていそうな人をひとり思い浮かべて、聞いてみる
誰に聞けばいいか分からなければ、「誰に聞けばいいですか」と聞くところから始めて大丈夫です。ひとつでも試してみたら、それはもう、次の季節への一歩です。
悩んだら、聞けばいい
- 人生にも季節がある。冬は、根を育てる時期
- 未来はまだ決まっていない。見る方向で、見える道が変わる
- 全部と戦わなくていい。引くことも作戦のひとつ
- 舵は自分が握っていい。そして、自分の軍師を持っていい
- ひとりで悩んでも、自分の経験や知識を超えた答えは出てこない
- 解決策は、たったひとつ。知っている人に聞くこと。周りにいなければ、探し出す
最後に 心が前を向けば、病は超えていける
私は、気持ちが本心から前を向いたとき、人は病を超えていけると信じています。
ここで言う「超える」とは、病気がなかったことになる、という意味ではありません。病気や障がいがあっても、それに人生の舵を渡さないこと。病を抱えながらも、自分の足で、明るく前向きに歩いていくことです。
本心からの明るさは、無理につくるものではありません。つらいときは、つらくていい。冬の季節を過ごし、知っている人に聞き、ひとつずつ道が見えてきたとき、心は自然と明るく、前を向いていきます。治療やまわりの支えと一緒に、その一歩を重ねていけばいいのです。
文:
※眠れない、食べられない、気持ちが沈む日が長く続くときは、ひとりで抱えず、早めにかかりつけの医師や医療機関に相談してください。
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